他人の痛みや、苦しみなんて。想像する事しかできない。それは凄くよくわかるけど、だけどそれがたまらなくもどかしい時がある。
僕は僕の痛みを持ってる。皆もそれぞれ、痛みを持ってる。……はず。それに大小はあるにせよ、やっぱり人それぞれ違う訳で。毎日のように時速100キロで車を飛ばしてる人と、自転車しか乗った事の無い人だったら。それぞれに120キロで走る車に乗ってもらった際の衝撃っていうか、インパクトには差があるんじゃなかろうか。
人それぞれ背負うものも、その形も、重さも、色も。全部違う。だからこそ、何度も言うけど、他人の痛みは想像するしかできない。
……僕はそれが少し苦手なんだろうと思う。上手く想像ができない。どいつもこいつも幸せに見えて。輝いてて。だのに、彼等から吐き出される言葉の愚かしさに僕は苛立ちを通り越して絶望して。この世にはクズみたいな人間しか居ないのかと途方に暮れた時もあった。
「俺のに比べたらお前のなんて……」っていう考え自体が、既に間違っているんだって、分かってるけどやっぱりそんな風に思えないんだぜ……。未熟なんだぜ。
立場や、境遇や。角度なんかも。それぞれがそれぞれ違ってて、だからこそうまれる歪みを僕は受け入れられなくて。
就職活動って、大変なんですね。全然知らなかったよ。皆「大変大変」言ってるけど、実際大した事無いんじゃね?程度に思ってたんだ、ホントいうと。それはただ単に俺が就職活動の経験がなかったからなんだ。だけど今日、それ(就活)に関して涙ながらに「苦しんでる」って言われて。何回受けても、何回面接しても落とされるんやってさ。正直、なんて言って良いか分からんくなった。
僕は高校卒業してから、学校に行かず独学で絵を学ぼうと決めて。そしたら、「毎日がゴールデンウィーク……むしろゴールデンイヤーだな」と言われて。しかも、あらゆる方面から言われて。皆考える事は同じなんだなぁ~って、ちょっと可笑しくなったけど。だけどやっぱり、冗談半分なその言葉でも、当事者……俺からしてみたら、「あぁ……そんな風な感覚なんかぁ……」って。だって凄い不安で、真っ暗で、道があるかどうかも分からなくて。そんな日々を、「自分で選んだ道だから」って、それだけを信じて歩いてて。しかもそれだって、別段選びたくて選んだわけじゃなくて。沢山妥協を重ねて、その結果その道を選んだだけで。そんな折、「お前楽そうで良いな」みたいに言われて。言葉も出ない。笑うしかない。俺の痛みはお前には分からない、と言うしかない。それ以外の言葉を出そうと思ったら暴言になる。
だから多分、同じ事なんだろうと思う。僕の痛みは、大学に通ってる方々には分からないし。大学に通ってる方々の痛みは、僕には分からないし。
それでもやっぱり、話をしてくれたという事に対しては、誠意を持って答えなきゃいけないんだろうと思った。
大学に通っているという事で、どれだけの安心感を得られているのかっていうのが、その人には身をもって分かってもらえたようで。なんか、不謹慎だけれど、少しだけ嬉しかった。
沢山の事を知りたい。沢山の人の痛みを知りたい。どれだけの痛みがあって、どれだけの不安があって、どれだけの理不尽や、どれだけの差別がこの世界にはあるのか。全部を知って、その上で「お前ら小せぇな」って俺がいえたら、俺ってもう神にでもなれる気がするけど、絶対言えないなぁ……うん。でも、そしたらそれはそれで、「なんだ。俺より重い奴沢山いるじゃん」って、すげぇみっともない優越感に安堵するんだろうと思う。
っていうか、「俺」なのか「僕」なのか、はっきりしろよ自分。
おしまい。
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